台北から日帰りで行ける人気観光地として知られる九份(きゅうふん)。山あいに広がるレトロな街並みは、赤ちょうちんが灯る夕暮れ時になると幻想的な雰囲気に包まれ、多くの観光客を魅了しています。
ジブリ映画の世界を思わせる風景、海を望む高台の茶芸館、台湾のグルメが並ぶ細い階段道など、見どころが凝縮されたスポットです。日本からのアクセスもよく、初心者でも安心して楽しめる台湾屈指の絶景エリアです。
台湾・九份とは

九份は、台北市内から車で約1時間、バスや電車とバスを乗り継いでも1時間半ほどで行ける、山の中腹に位置する小さな町です。かつては金鉱の採掘で栄え、最盛期の1930年代には人口が約5万人を超えていました。
現在はその面影を残しつつ、観光地として再生され、年間を通じて多くの国内外からの旅行者が訪れています。石畳の階段やレトロな建物が連なる風景は、台湾ならではの情緒を感じさせてくれます。
ジブリ映画『千と千尋の神隠し』の舞台?
九份が世界的に注目されるようになったきっかけのひとつが、スタジオジブリの名作『千と千尋の神隠し』との類似点です。宮崎駿監督が台湾を訪れた記録はありませんが、九份の夜景、特に「阿妹茶樓(アーメイチャーロウ)」の建物や、赤ちょうちんが並ぶ石段の風景が映画の世界を連想させると話題になりました。
実際に訪れてみると、その幻想的な空気に包まれ、どこか非現実的な体験を味わえます。夕暮れ時から19時頃にかけてが最も雰囲気が良く、写真撮影にもおすすめの時間帯です。SNS映えスポットとしても人気が高く、日本人観光客にも特に支持されている理由のひとつです。
九份の魅力を満喫する方法

九份を訪れる際は、ただ散策するだけでなく、訪問時間やスポットの選び方を工夫することで、その魅力をより深く味わうことができます。
夕暮れ時の赤ちょうちんが灯る街並みを歩き、台湾のグルメを食べ歩き、昔の金鉱時代の面影を感じられる場所を巡ることで、九份ならではの体験が楽しめます。限られた時間でも充実した観光が可能なため、台北からの日帰り旅行にもおすすめです。
夕方から夜の時間に訪れる
九份の最大の見どころは、夕暮れから夜にかけての幻想的な風景です。日中は観光客が多く混雑しますが、夕方17時頃からは徐々に人が落ち着き、赤ちょうちんに灯りがともり始めます。
特に「阿妹茶樓」の周辺や石段のエリアは、まるで映画の世界に入り込んだような雰囲気となり、訪れる人々を魅了します。ライトアップが映える夜景は写真映えも抜群で、旅の思い出を美しく残すことができます。
九份でグルメを楽しむ
九份は、台湾ならではのローカルグルメを楽しめる場所としても人気です。基山街や豎崎路沿いには、魚のすり身団子スープや芋団子スイーツ「タロイモボール」などの名物が並びます。
小籠包や台湾風ソーセージなどの食べ歩きにもぴったりな屋台が充実しており、価格は1品40元(約200円)前後と手頃です。現地で人気の茶芸館では、本格的な台湾茶と軽食のセットも楽しめ、ゆったりとした時間を過ごすことができます。
金鉱の町だった時代の九份を体験
九份は19世紀末に金鉱が発見されてから一気に発展し、「黄金の町」として栄えました。その歴史を今に伝えるのが、町の一角にある「黄金博物館」です。
ここでは当時の鉱山道具や鉱夫の生活が再現されており、巨大な金塊(220キロ以上)に実際に触れることもできます。また、周辺には旧鉱山施設やトンネル跡も保存されており、往時の面影を肌で感じられる貴重なスポットです。歴史好きの旅行者にもおすすめです。
台北から九份へのアクセス・行き方

九份は台北から約30キロほど東に位置し、日帰り旅行先として高い人気を誇ります。アクセス手段も豊富で、タクシーや電車、バス、オプショナルツアーなど、旅のスタイルに合わせた移動方法を選ぶことができます。それぞれにメリットがあり、所要時間や費用を考慮しながら、自分に合ったルートで快適に九份観光を楽しめます。
タクシー
タクシーを利用すると、台北市内から九份まではおよそ1時間で到着します。料金は片道約1,000元(約4,600円)と他の手段より高めですが、快適さと利便性に優れています。ホテルから直接乗車でき、乗り換えの手間もなく、ドアツードアで移動できる点が大きな魅力です。
複数人で利用すれば1人あたりの負担も軽減されるため、グループ旅行にもおすすめ。雨の日や荷物が多い場合、時間を効率よく使いたい方にぴったりな移動手段です。
電車
電車を利用する場合は、台北駅から台湾鉄道(TRA)に乗り、約40分で瑞芳駅へ向かいます。運賃は普通車で49元、高速タイプで76元(約225〜350円)です。瑞芳駅から九份へは、タクシーで約10分(約205元)、または路線バスで約15分(約15元)の移動となります。
全体の所要時間は約1時間半〜2時間で、交通費の合計は約64元〜91元(約300〜420円)とリーズナブルです。鉄道旅ならではのローカルな雰囲気が味わえ、景色を楽しみながらの移動ができます。コストを抑えつつ旅を楽しみたい方や、途中で瑞芳の街に立ち寄りたい方にもおすすめのルートです。
バス
台北市内から九份までは、直通バスでアクセスすることが可能です。西門駅付近から出発する965番バスは、約1時間〜1時間半で九份に到着し、運賃は90元(約415円)と経済的です。また、忠孝復興駅から発着する1062番バスもあり、こちらは約1時間半〜2時間、料金は101元(約465円)です。
どちらの路線も乗り換え不要で便利ですが、特に週末や休日は混雑しやすいため、早めの出発が推奨されます。座席が確保できれば車窓からの景色も楽しめるため、のんびりと移動したい方や交通費を抑えたい旅行者におすすめの選択肢です。
現地のオプショナルツアー

初めての台湾旅行や移動に不安がある方には、現地発のオプショナルツアーが安心で便利です。所要時間は約5〜13時間、料金は1,200元〜4,600元(約5,500円〜21,000円)と幅広く、内容に応じた選択が可能です。
日本語ガイドが同行するツアーや、十分での天燈上げや十份瀑布とのセット観光が含まれるプランも人気です。送迎付きで移動のストレスもなく、短時間で効率的に観光スポットを巡れる点が魅力です。自由時間も設けられており、団体行動が苦手な方にもおすすめできます。
台湾・九份のおすすめ観光スポット5選
九份には、古き良き台湾の面影を残す歴史的建物や、美しい景観を楽しめる茶芸館など、多彩な観光スポットが集まっています。石畳の階段道やレトロな街並み、山と海を望む絶景スポットまで、歩くだけで心が躍るような魅力に満ちています。ここでは、特に人気のある五つの名所を厳選してご紹介します。
基山街(チーシャンチエ)

基山街は九份観光の中心的な通りで、約300メートルにわたって台湾のグルメや雑貨、茶芸館が軒を連ねています。昼間は観光客で賑わい、夕方になると赤ちょうちんが灯り、幻想的な雰囲気に変わります。
名物のタロイモ団子スイーツや魚のすり身スープなどを食べ歩きながら、台湾ならではのローカル文化を体験できるのが魅力です。写真映えするスポットも多く、初めて九份を訪れる方にぜひおすすめしたい通りです。
- 住所:新北市瑞芳区基山街
九彬金山岩
九彬金山岩は1917年に建てられた歴史ある仏教寺院で、基山街の奥に位置しています。石段を登った先には立派な本堂が構えられ、寺院の裏手からは九份の街並みと海を一望できます。
観光エリアの喧騒から少し離れており、静かな雰囲気の中で心を落ち着けるひとときを過ごすことができます。華やかな装飾が施された仏像や祈祷スペースもあり、九份の歴史と信仰文化に触れられる場所として人気があります。
- 施設名:九彬金山岩
- 住所:新北市瑞芳区基山街199号
- 営業時間:終日開放
- 入場料:無料
賢崎路(ケンザキロ)

賢崎路は、石段が連なる九份の象徴的な坂道で、基山街と並ぶもう一つの観光ルートです。両側にはレトロな建物が並び、茶芸館やアート雑貨店、宿泊施設などが軒を連ねています。
阿妹茶楼もこの通りにあり、観光写真の定番スポットとしても有名です。坂を登りきると眼下には九份の街と海が広がり、風景を楽しみながらゆっくりと散策できます。朝や夕方など、混雑を避けた時間帯の訪問がおすすめです。
- 施設名:賢崎路
- 住所:新北市瑞芳区豎崎路
阿妹茶楼(アーメイチャーロウ)

阿妹茶楼は、九份で最も有名な茶芸館のひとつで、その外観は赤ちょうちんに彩られ、まるで映画の世界に迷い込んだような美しさです。店内では台湾茶や点心をゆっくり楽しむことができ、窓際の席からは九份の山と海を一望できます。
特に夜になるとライトアップされ、幻想的な雰囲気が一層際立ちます。映画『千と千尋の神隠し』の湯屋のモデルとも言われ、多くの観光客が訪れる定番スポットです。
- 施設名:阿妹茶楼
- 住所:新北市瑞芳区市下巷20号
- 営業時間:8:30~翌2:30
- 電話番号:+886-2-2496-0833
- 公式HP:https://www.a-meiteahouse.com/
水心月茶坊(シュイシンユィエチャアファン)

水心月茶坊は、観光客で賑わうエリアから少し離れた場所にある、隠れ家的な茶芸館です。落ち着いた雰囲気の店内では、高品質な台湾茶を静かに楽しむことができ、窓からは九份の街並みや海を一望する絶景が広がります。
観光の合間に一息つきたい時や、混雑を避けてゆったりとした時間を過ごしたい方におすすめです。丁寧に淹れられる茶と、美しい景色に癒やされながら、特別なひとときを味わえます。
- 施設名:水心月茶坊
- 住所:新北市瑞芳区輕便路308号
- 営業時間:13:30~19:00
- 電話番号:+886-2-2496-7767
- 公式HP:https://www.jioufen-teahouse.com.tw/jp/artist-teahouse?id=66
台湾・九份観光を楽しむためのポイント

九份を訪れる際には、時間帯や服装、天候への備えなど、いくつかのポイントを押さえておくことで、より快適に旅を楽しむことができます。台湾特有の気候や九份の地形を考慮し、計画的に行動することで、思い出深い観光体験につながります。
日の入り前後を狙うのがおすすめ
九份観光で最も幻想的な時間帯は、日が暮れ始める17時〜19時頃です。この時間帯には赤ちょうちんが灯り始め、基山街や阿妹茶楼周辺が一気に幻想的な雰囲気に包まれます。
台湾では日没が日本より早く、季節によっては18時前には暗くなり始めるため、日の入り時刻を事前にチェックしておくのがおすすめです。観光客が多く集まる時間でもありますが、夜の九份を体験するにはぴったりなタイミングです。
ゆっくり楽しみたいなら午前中
九份の街は午前10時頃から店が開き始め、午前中は観光客も比較的少なめです。特に平日の午前中は落ち着いた雰囲気で、ゆったりと散策やお茶を楽しみたい方にベストな時間帯です。
台湾では日中になると気温が上がりやすく、特に夏場は蒸し暑くなるため、涼しいうちに観光を始めると体力的にも快適です。また、写真撮影にも適した柔らかい光が差し込むため、街並みや風景を美しく記録できます。
歩きやすい靴・雨具を忘れず
九份の街は山の斜面に広がっており、坂道や階段が多いのが特徴です。通りは石畳や濡れやすい場所が多いため、滑りにくい靴や歩きやすいスニーカーを履いて行くことを強くおすすめします。また、台湾の北部は雨が多く、九份でも突然のにわか雨に遭うことが少なくありません。
折りたたみ傘やレインコートを持参すると安心です。現地で購入することも可能ですが、観光の時間を無駄にしないためにも事前に用意しておくと便利です。天候と足元対策が、九份観光を快適にする鍵です。
まとめ
幻想的な赤ちょうちんの灯り、山の斜面に広がるレトロな街並み、美味しい台湾グルメ――九份には、まるで物語の中に迷い込んだような非日常の風景が広がっています。
台北からのアクセスも良く、日帰りでも宿泊でも楽しめるのが魅力です。時間帯や装備を工夫するだけで、さらに深い感動に出会える場所。台湾旅行で忘れられない思い出を作りたいなら、ぜひ一度九份の魅力を体感してみてください。